目の病気

アレルギーによる目の病気

私たちの身体には、細菌やウィルスから自らを守る「免疫」というはたらきがあって、細菌やウィルスが侵入するとそれらを攻撃・排除するための「抗体」がつくられ、次に同じものが侵入した場合には効果的に排除する仕組みが備わっています。
ところが、この仕組みは、常に適切にはたらいてくれるわけではありません。
侵入してくる「抗原」、すなわち免疫反応を起こす原因物質に対して身体が過剰に反応して、結果的に私たちにとって不都合を生じるような反応を「アレルギー」と呼んでいます。抗原の中でも、アレルギー反応を起こす原因物質は、「アレルゲン」と呼ばれています。

アレルギー性結膜疾患

結膜は、上下のまぶたの裏側と、白目の表面を覆っている粘膜で、外からの刺激や異物にさらされやすく、アレルギー反応を起こしやすい場所です。
「かゆみ」がよく知られた主症状ですが、痛みやまぶたの腫れ、目やになどの症状もしばしば伴っています。

■アレルギー性結膜疾患の原因

アレルゲンとしては、スギやヒノキをなどの「花粉」や、家屋内のチリ、ほこりや、カビ、ペットの毛やフケなどの「ハウスダスト」が代表的です。コンタクトレンズもアレルギー反応を引き起こします。

■アレルギー性結膜疾患の種類
@花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)(図1)

花粉が原因となって起こるアレルギーで、スギやヒノキの花粉症が代表的ですが、その他の植物も花粉症の原因となります(表参照)。
毎年同じ時期に症状がみられることが特徴です。

図1.季節性アレルギー性結膜炎(上まぶたの裏の結膜が充血し、乳頭とよばれる変化が強い)

《花粉症の原因植物と飛散時期》花粉症の原因植物と飛散時期


A通年性アレルギー性結膜炎

ほこりなどの中にあるハウスダストやダニが主なアレルゲンとして症状を引き起こします。
ダニは死んでいても、またその排泄物であってもアレルゲンになり症状を引き起こします。イヌやネコの毛、フケ、あるいはカビなどでも同様です。

Bアトピー性角結膜炎(図2)
アトピー性皮膚炎に合併して起こる慢性角結膜炎(病態の基本はアレルギー性結膜炎と同じ)で、アトピー素因を持つ人は,複数の抗原に対して反応が起きやすいために,年中さまざまな抗原にさらされて、慢性炎症を生じやすいと考えられます。

図2.アトピー性結角結膜炎(白目[結膜]と黒目[角膜]の境界部分で強い炎症がある)
C春季カタル(図3)

慢性重症型のアレルギー性結膜炎で「石垣状乳頭」と呼ばれる、結膜の増殖性変化を伴っているタイプです。アトピー性皮膚炎を伴うと重症化することが少なくありません。
炎症が強くなると、角膜(黒目)にも傷ができ(角膜潰瘍)、視力低下につながります。ステロイド剤や免疫抑制剤の点眼による治療が必要なことが多く、眼科専門医による慎重な治療と経過観察が必須となる疾患です。


図3.春季カタルの増悪時に見られた高度の石垣状乳頭増殖(左)と、同時期にみられた角膜潰瘍(中央).免疫抑制剤(タクロリムス)の点眼治療が功を奏し病変は鎮静化した(右)。

D巨大乳頭性結膜炎(図4)

コンタクトレンズなどの異物に対して、アレルギー反応を生じることが少なくありません。
機械的な刺激によって上まぶたの裏側の結膜に増殖性変化(巨大乳頭)を生じます。
コンタクトレンズがはずれたり、曇りやすくなったり、という症状もあります。

図4.ソフトコンタクトレンズ装用者にみられた巨大乳頭性結膜炎

■アレルギー性結膜疾患の治療
@原因を回避する

症状のもとになっているアレルゲンが、花粉であれば外出時に防護用のメガネや、マスクなどを着用する、あるいは外出そのものを避けるといった花粉対策を、ハウスダストの場合には絨毯敷きをやめる、といった対策も考えられます。
コンタクトレンズが原因となっている場合はレンズ装用を中止し、メガネに変更することが効果的です。

A抗アレルギー薬の点眼

マスト細胞という免疫担当細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制する薬や、マスト細胞から放出されるかゆみを起こす化学伝達物質であるヒスタミンの受容体への結合を阻止する抗ヒスタミン薬などの点眼をまず行います。

Bステロイド点眼薬

症状が強い場合には、さらにステロイド点眼薬を併用します。ステロイドは炎症を抑えるはたらきが強いため、アレルギー性結膜疾患の治療にはとても有用です。
しかし、眼圧上昇などの副作用もみられ、「両刃の剣」という側面もあります。
眼科専門医による眼圧チェックを含めた管理が欠かせません。

Cその他に

人工涙液点眼をこまめに点眼するなどして、アレルゲンを目から洗い流すことも効果的です。市販の、カップを使用した洗眼方法は角膜を傷つけるおそれもあるため、必ずしもお勧めできません。
重症例では、免疫抑制剤の点眼も考慮されます。

以上のように、アレルギー性結膜疾患の病状は多彩で、その治療も、病態に応じて対応が異なってきます。 眼科専門医による診断・治療を受けられることを強くお勧めいたします。


アトピー性皮膚炎と目

アトピー性皮膚炎は、かゆみをともなう湿疹が軽快と悪化を繰り返すアレルギー性の病気です。アトピー性皮膚炎では、眼瞼皮膚炎、角結膜炎、円錐角膜、白内障、網膜剥離など、目のあらゆる部位に合併症をおこす可能性があり、特に顔面の皮膚炎が重症化した場合に多くみられます。自覚症状が少ない場合にも、眼科専門医による眼合併症のチェックが重要です。 眼瞼(まぶた)の皮膚炎や、先に述べたアトピー性角結膜炎・春季カタル以外にも、視力に影響する以下のような合併症への注意が必要です。
なお、アトピー性皮膚炎は乳幼児期に発症することが多い疾患ですが、目の合併症はむしろ思春期以降にアトピー性皮膚炎を発症した患者さんに高頻度にみられます。

@白内障(図5)

アトピー性皮膚炎を発症してからの期間が長いほど、また顔面の皮膚炎が重症なほど白内障を合併する率が高いといわれています。かゆみのために目をこすったり、叩いたりすることの影響が大きいと考えられています。アトピー白内障の特徴として、水晶体前面に一致し手ヒトデ状・クローバー状に拡がる前嚢下混濁や、後面に一致した皿状の後嚢下混濁が多く見られます。これら混濁から時を置かずに、水晶体全体が濁る成熟白内障となることもあります。

図5.アトピー性皮膚炎に伴う白内障.前嚢下のヒトデ状混濁に加え
進行した水晶体全体の乳白色の混濁を認め(左)、視力は著しく低下している。
右は白内障発症初期のクローバー状混濁で、視力は良好である。

通常の白内障と同様に、進行すれば手術を行います。

A網膜裂孔・網膜剥離

アトピー性皮膚炎で網膜剥離を発症する患者さんには、顔、特に目のまわりの皮膚炎が重症な人が多く、かゆさのためにくり返してまぶたをこすったり叩いたりすることが原因か、あるいは最も大きな誘因であろうとされています。就寝中に無意識に叩いているのを、ご家族が観察している例もみられます。
しかし、アトピー性皮膚炎にみられる網膜剥離がすべて外傷性というわけではありません。アトピー性皮膚炎の頻度が高いために、アトピー性皮膚炎のある患者さんに一般的な網膜剥離がみられることも少なくありません。
しかしアトピー性皮膚炎の患者さんには、外傷性が強く疑われる巨大な網膜裂孔(図6)がみられることが若年でも決してまれではなく、難治性網膜剥離に至る可能性があるため、視力低下や視野欠損などの症状がある場合には、眼科専門医による眼底検査(散瞳検査)が必須です。
図6.巨大裂孔による網膜剥離

B円錐角膜

円錐角膜は角膜の中央やや下方が薄くなって前方に突出するために不正乱視を生じる疾患です(図7)。円錐角膜の患者さんには頻繁に目をこする動作がみられ、慢性的な目のかゆみのため目をこするという機械的な刺激によって角膜実質が薄くなることが、アトピーの患者さんで円錐角膜が発症する原因になっているという見方が有力です。
円錐角膜の治療は、まず専用に調整したハードコンタクトレンズの装用ですが、皮膚炎や結膜炎の治療も同時におこなう必要があります。

図7.円錐角膜.角膜中央やや下方が薄くなって前方に突出している。


以上のように、アレルギーによる目の病気には自覚症状が比較的軽いうちに、視力がおかされる状態へと進行し始めていることもあります。
眼科専門医によって詳しく目の検査を受けられることをお勧めいたします。