目の病気

加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は、網膜の中心部、「黄斑」という部分に加齢に伴い病変を生じて、視機能特に視力が低下する病気です。加齢黄斑変性は、脈絡(みゃくらく)膜から発生する異常な新生血管(脈絡膜新生血管)の有無により「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」の2つに分類されます。
滲出型でみられる新生血管の血管壁は大変もろいために、簡単に出血したり、血液の成分が漏れ出したりして、黄斑の機能を障害します。萎縮型よりも進行が早く、出血や滲出物により、視力低下や変視症(物がゆがんで見える)、中央の視野が欠ける、などの症状が悪化していきます。いずれかの時点で新生血管の活動は停止しますが、それまでに黄斑の網膜組織は破壊されていて、高度の視力障害を後遺します。
萎縮型は、黄斑の加齢性変化(網膜色素上皮細胞の萎縮、ドルーゼンと呼ばれる老廃物の蓄積)が強くあらわれることにより、黄斑部網膜細胞が徐々に萎縮してゆくタイプです。病気の進行は緩やかで、萎縮部分が拡大して中心窩にかからない限り、高度の視力障害には至りません。しかし、時間の経過とともに萎縮型から滲出型へ移行することもあるので、定期的に経過をみることが大切です。特に、もう片方の眼がすでに滲出型加齢黄斑変性となっているような場合には、注意深い経過観察が必要となります。
以下は、滲出型加齢黄斑変性についての内容です。

加齢黄斑変性の自覚症状


図1:自覚症状―中心視野の障害
網膜の中心部である黄斑部が障害されるため、視野においても中心部分の、もっともよく見ようとするものが見えにくくなります(図1)。

■変 視 症:見たいものがゆがんで見える
■中心暗点:見ているものの中心が欠けて見えない
■視力低下:見たい部分がぼやけてはっきり見えない
などの症状が起こります。

加齢黄斑変性の検査

視力検査に加えて、眼底検査、蛍光眼底造影、網膜断層検査(光干渉断層計検査)などを行います。

■眼底検査(図2)
眼底にある網膜の状態を詳しく観察します。検査の前に散瞳(さんどう)剤を点眼して瞳孔を開き、細隙灯顕微鏡を用いるなどして、病変を拡大して観察します。
眼底検査だけでは、新生血管の位置や大きさ、活動性などを評価することは困難です。



図2:滲出型加齢黄斑変性の眼底
■蛍光眼底造影
フルオレセイン、インドシアニングリーンといった造影剤を腕の静脈から注射して、眼底の新生血管の位置や大きさ、活動性を調べます。

図3:滲出型加齢黄斑変性の
フルオレセイン蛍光眼底造影(図2の症例)
■光干渉断層計検査(図4)

眼底の組織断面の状態を詳しく調べます。新生血管の有無や大きさ、網膜剥離(網膜が浮き上がっているところ)や網膜浮腫(網膜のむくみ)などが観察できます。造影剤などは必要ありません。


図4:正常な網膜断層像(左)と滲出型加齢黄斑変性の断層像(右)

加齢黄斑変性の治療

■抗血管新生薬療法

健康な状態においても、身体の一部の血液供給が不足したり血液需要が増えたりすると、血管の新生を促す物質が産生されます。代表的な物質を血管内皮増殖因子(VEGF)といい、滲出型加齢黄斑変性の場合にもVEGFによって脈絡膜新生血管の成長が促されます。抗血管新生薬は、このVEGFの働きを抑える作用があり、眼内に注射することにより新生血管の増殖や成長を抑制する効果があります。現在、ルセンティス(ラニビズマブ)、マクジェン(ペガプタニブ)、アイリーア(アフリベルセプト)という3種類の薬があります。
黄斑のさらに真ん中、すなわち網膜の中心は中心窩(ちゅうしんか)といいますが、中心窩に及ぶ新生血管がある患者さんがこの治療の対象となります。
点眼剤による麻酔の後、抗血管新生薬を眼球内に注射します。入院の必要はありません。薬は眼球内にしばらくとどまり、効果が数週間持続します。1回で新生血管の活動性が治まることは少ないため、ルセンティスは4週ごとに少なくとも3回、マクジェンは6週ごと、その後も必要に応じて注射を繰り返します。アイリーアは、まず1か月ごとに3回注射し、その後は経過を見ながら、2か月に1回もしくは適宜、治療を続けます。
新生血管の発育が抑制され、視機能が維持されるだけでなく、血管からの出血や滲出物の吸収とともに視機能が改善することも経験されます(図5)。
当院では、現在、アイリーア・ルセンティスによる抗血管新生薬療法を行っています。



図5:抗血管新生薬療法.VEGFを抑える薬剤を眼内に注射し新生血管の増殖や成長を
抑制する光干渉断層計によるルセンティス注射前(左)と、3回注射後(右)の断層像

■レーザー光凝固(図6)

新生血管が中心窩に及んでいない場合には、レーザー光線の熱で焼きつぶすレーザー光凝固術を適応することもあります。これにより新生血管がなくなると病気の進行は止まり、その時点の視機能を保つことができます。しかしレーザー光線が組織を焼きつぶす効果は強力で、新生血管とともに周囲の正常な網膜も破壊されてしまいます。凝固した部分は暗点(視野のなかで見えない部分)になり、見ようとする物のすぐ近くに、見えない部分ができてしまいます。中心窩を守る治療を優先し視力を守るため生じてしまう副産物です。


図6:レーザー光凝固.新生血管が中心窩にある場合には行われない

■光線力学的療法(PDT[図7])

光に対する感受性をもつビズダイン(ベルテポルフィン)という薬を静脈から点滴し、その薬が中心窩にある新生血管に達したとき(点滴開始から15分後)に、非発熱性のレーザーを照射する治療法です。ビズダインが光活性化されて、活性酸素が発生して新生血管の内壁が障害され、血管内を流れる血液が詰まって血管が閉塞します。
単独で行われるばかりでなく、抗血管新生薬療法と併用されることも多くなってきています。
治療直後は、強い光を浴びることができません。初回治療後は数日間の入院が必要です。専用のレーザー装置と入院設備のある施設へ紹介させていただいております。


図7:光線力学的療法。正常な網膜に影響を与えない程度の弱いレーザーによって
薬剤を活性化させ、網膜へのダメージを抑えながら、新生血管を退縮させる